今回は、2016年5月に創業し、住宅ローン業務の新しい仕組みを作ったiYell株式会社の窪田光洋様にインタビュー。窪田様がどのような背景で創業に至ったのか、どのような行動や考えが、ターニングポイントとなったのか、本記事ではインタビューを通して見えてきた、創業秘話とサービスに込められた想いを解き明かす。
プロフィール:
新卒でSBIアルヒ株式会社に入社し、29歳で最年少執行役員となる。2016年退社後、2人の共同創業者とともに起業し、住宅ローンのシステム、いえーる ダンドリのサービスを開始した。文化面を大切にしているのが大きな特徴であり、ホワイト企業大賞やGPTW6位といった働きがいに関するアワードを多数受賞しています。
目次:
はじめにどんなサービスを展開されているのかを伺っていきます。
iYellのサービス内容について教えてください。
弊社は住宅ローンプラットフォーマーです。
金融機関と住宅事業者を繋ぎ、テクノロジーの力を活用して両者の住宅ローン業務を効率化し、エンドユーザーに最適な住宅ローンを提供しています。住宅ローンを取り扱う各プレイヤーである金融機関・住宅事業者・エンドユーザーの視点を持ち、テクノロジーを駆使して様々な住宅ローンの課題を解決するために、サービス展開&ブラッシュアップをしています。
なぜ、住宅ローンに特化したサービスを始められたのでしょうか?
前職(住宅ローン会社)での経験から、一人一人のお客様に最適な住宅ローンが提供されていないという課題を感じたからです。日本には1万個以上の住宅ローン商品が存在しており、その中からお客様に最適な商品を提供する仕組みが必要だと考え、いえーる ダンドリのサービスを開発しました。
住宅ローンの課題とは具体的にどのようなものだったのでしょうか?
私が知っている範囲では、平均よりも高い金利で住宅ローンを組んでしまった方、具体的には最大2,000万円も損している方を見てきました。住宅ローンって車や保険などさまざまな買い物の中で一番高い買い物なのに、分かりやすい仕組みがないせいでしっかりと選ぶことができないことを課題に感じていました。
次は創業までのストーリーについてお伺いしていきます。
SBIアルヒ最年少役員から独立されたきっかけをお伺いできますでしょうか?
元々起業したいという願望がありました。
その願望から大学も経営学部に入っていますし、就職活動を進める中でSBIアルヒに入社を決めた理由も、起業制度があったことが大きいです。入社後はまず「20代で役員に就任する」という目標を設定し、そこから逆算して“今すべきこと”を常に考え、日本初・日本一というキーワードを意識しながら働いた結果、なんとか20代で最年少執行役員になれましたが、僕の本来の目的は「そもそも起業するために入社した」ということもあり、2016年に退社して起業しました。
起業時のエピソードがあれば教えていただきたいです。
元々お世話になっている方に人生相談をする機会がありました。SBIアルヒの会社を辞めて、新しいことをやりたいです!とお話したところ、「それなら3,000万円出資するよ」って言ってくださったのがきっかけです。
出資の条件が、「事業内容はどうせ変わっていくから何でも良い。“誰とするか”が大事だから、まず仲間を2人連れてきなさい」というものでした。そこで選んだのは、小林 紀雄(現:iYell株式会社取締役、CTO)と種田 裕樹(現 :iYell株式会社CVO)でした。普通はビジネスを決めてから出資していただくことが多いと思いますが、私の場合は順番が逆なんですよね。だからこそ事業に執着がないというか、どちらかというと大切な仲間とビジネスを立ち上げる方向に重きを置いていました。
この「何をするかより誰とするか」というフレーズは創業から大切にしており、現在でも経営理念としてiYellが最も大事にしている想いでもあります。
創業メンバーの方についても教えてください。
前職の新規事業部で一緒に働いていた小林 紀雄と種田 裕樹と共に、3名でiYellを創業しました。
起業前、種田は私と同じくSBIグループに新卒で入社し6年目、小林はハウスメーカーからSBIグループへ転職し5年目の年で、それぞれ新規事業部のマネージャーとして活躍していました。 iYellを創業する際に2人を選んだ理由は、前職で一緒に働いている時に「いつか自分で会社をやりたい」と発言したことがあったからです。
サービス立ち上げからの経緯を伺っていきます。
立ち上げ時のエピソードや苦労話があれば教えてください。
当然のことではありますが、私たちは市場に存在しないサービスをリリースしたため、まず「誰もがサービスを認知していない」という難題に直面しました。しかしながら、それ以上に困難だったのは「業界の慣習を変革すること」でした。
住宅事業者の業界では、「家を売ることは半人前であり、住宅ローンを売れて1人前」という考えが根強く、住宅ローンは自分たちの業務という強い意識があるため、その意識を変えることが大きな壁でした。 また、エンドユーザーからも、一生モノの高額な買い物をネットで済ますことに対して拒否反応がありました。
そこで資金調達の力を活用して大規模なキャンペーンを実施することで認知を獲得し、サービスを利用してもらうことに重点をおいたところ、徐々に利用を進めることができました。
大規模なキャンペーンとは、どのようなものでしょうか?
サービスを使ってほしいという一心で、2年以上にわたり不動産会社に無償でサービスを提供し続けました。やがてその便利さに気づいた会社が次々と増え、取り扱っていただく銀行も拡大していきました。エンドユーザーに対しても、住宅ローン専門のスタッフがサポートデスクとして寄り添い、不安感の解消に努めました。
サービスが業界に浸透してきたと感じたのはいつ頃でしょうか。
無料キャンペーンで使っていただける方も増えましたが、コロナの頃から一気に増えた認識です。コロナの頃はオンライン完結、つまり非対面で手続きを完了したいニーズが増えていました。
その頃の日本は住宅ローンの95%が対面で行う会社でしたので、非対面で住宅ローンの手続きを完結できる、私たちのサービスを使ってくださる方が一気に集まってきました。
次は、少し視点を変えて、組織や働く社員の方にフォーカスを当てていきます。
自社の働き方や制度についてはいかがでしょうか。
当社はvisionとして「応援し合う地球へ~chain of Yell~」を掲げ、missionとしては「隣の人の夢を応援する」を掲げております。幸せの連鎖を地球全体に広げるため、「応援し合う地球」を本気で作りたいと思っております。
そして、「文化」を最重要視しており、経営理念としては、「何をするかより誰とするか」を掲げ、バリュー経営・社員ファースト経営・1000年経営の、三つの柱を掲げております。
18個のバリューを大切にしているとのことですが、バリューの制作秘話や日々の業務の中でバリューを浸透させるために工夫していることがあれば教えてください。
バリューの制作秘話は、まず、全社員で当時のiYellで大切にされていた要素を洗い出し、本質的に共有すべき価値基準を言語化しました。 次に浸透しやすさを考慮し、「iYellists(イエリスト)」の頭文字にそれぞれ英単語を当てはめました。仕事へのスタンスや行動にフォーカスした「Job ver.」、想いや心などにフォーカスした「Mind ver.」。あわせて18個のバリューに、iYellの価値感を組み込みました。
日々の業務の中で浸透させるために工夫していることは、共通言語(iYell語)、バイブル(COMPASS)、ニックネーム、マスコットキャラクター、テーマカラー、 共通グッズを活用しています。 さらに、社内にある会議室の名前に、共通の価値観である18個のバリューの名前を採⽤しています。日常的にバリューを意識して業務を行える環境を整えています。
「何をするかよりも誰とするか」「社員ファースト」「社員の夢を叶えることが窪田様の夢」など、とことん社員を大切にするお考えですが、そこに至った背景やご経験はどのようなことがありましたか?
前職の新規事業部での経験がとても影響しています。前職の新規事業部では、「日本で初めての商品を売る」という非常に重要なミッションを担当していました。当時の新規事業部のメンバーは小林、種田を含む、共通の価値観を持つ仲間がたくさんいました。
「日本で初めてのもの」という挑戦には、事業の成功に向けて漠然とした不安がありましたが、共通の価値観を持つ最高の仲間と共に働けたことが、事業を成功させる鍵となりました。
その経験から、能力に関係なく共通の価値観を持つ仲間となら、どんな困難でも乗り越えられると考えるようになりました。社⻑交代に伴い事業は終了しましたが、その経験が現在の「働く人を大切にする」という考え方に私の中で深く根付いていると感じています。
最後に今後の展望について伺っていきます!
社員を大切にしている貴社が今後目指すこと、展望はどのようなことでしょうか?家×ITという領域を広げる予定はありますでしょうか?
将来的に取り組んでいきたいことは3つあります。
1つ目は、住宅事業者様をローン以外でもお手伝いしていきたいです。ローン以外のシステムも開発し、住宅事業者様の業務効率化や売上向上に役立つサービスを展開していきたいと考えています。
2つ目は、ローンテックの世界を広げていきたいです。現在のローン業界はまだまだアナログであり、効率化の余地があると感じています。我々が培った住宅ローンテックのテクノロジーやノウハウを様々なローン(教育ローン、リゾートハウスローン、ブライダルローンなど)に応用していき、日本中のローン業界が進化することを目指しています。
3つ目は、世界中の人々が住宅ローンで困らないように海外展開をしていきたいです。住宅ローンは世界中で必要とされるものですので、弊社のサービスで世界各国の人々に価値を提供したいと考えています。
窪田様、様々な質問にお答えいただきありがとうございました!
iYell株式会社様の企業情報はこちらをご覧ください。
企業情報 https://iyell.co.jp/
Comments