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サプライチェーンの最適化と出資へ

更新日:10月17日



今回お話を伺ったのは、セイノーホールディングス株式会社オープンイノベーション推進室、CVC担当の髙橋様。同社は、2023年4月にアンカーLPとして参画するLogistics Innovation Fund投資事業有限責任組合(以下“LIF”)の承継ファンドとして「Value Chain Innovation Fund(以下”VIF”)を設立。VIFにおける投資実績、今後の展望、CVC担当の髙橋様の業務について伺った。


目次:



Value Chain Innovation Fund(以下VIF)立ち上げの経緯を教えてください。

2019年12月に立ち上げたLIF(Logistics Innovation Fund投資事業有限責任組合)では、スタートアップ企業と共に物流業界の課題解決に取り組んでいました。しかし、物流領域だけではなく、バリューチェーン全体に領域を広げることにより、さらなる業界全体、お客様の課題解決に貢献できるのではないかと考え、投資領域を以下の通り拡大し、かつスタートアップとの連携もさらに強化しています。


これまでの投資実績としてはいかがでしょうか?

サプライチェーンにおいて、物流から近い領域と遠い領域があるのですが、近い領域ですと卸売のプラットフォームを提供しているorosy株式会社( https://retailer.orosy.com/ )やフルカイテン株式会社( https://full-kaiten.com/ )などの、在庫管理を最適化するプラットフォームへの投資を行ってきました。その他は、一次物流です。農業従事者はまだまだ高齢者の方が多いため、各業者とのやりとりが電話やFAXで行われることが大半です。そうすると、情報連携がなかなかしづらいという問題がありまして。株式会社kikitori( https://www.kikitori.jp/ )は、出荷者と流通事業者間で行われる、集荷や販売、資材の受発注等のやりとりなどをスマホで手軽に行えるサービスを提供しています。高齢者の方々もお孫さんとLINEでやりとりすることに慣れていらっしゃるので、LINEを活用して出荷作業ができるというものです。そこに物流データが蓄積されていくため、最適な物流提案ができるようになりました。
少し遠い領域ですと、バッテリーの廃棄物から不純物を取り除いて、再度バッテリーを作成する技術を持っている株式会社エマルションフローテクノロジーズ( https://emulsion-flow.tech/  )です。これから車がどんどんEV車に変わっていくかと思いますが、電池やバッテリーが再利用できるようになると、社会問題の解決に繋がっていくため、投資をしました。また、就労困難者特化型BPOプラットフォームを提供しているVALT JAPAN株式会社( https://www.valt-japan.com/ )や、“真空特許技術”を持つ株式会社インターホールディングス( https://www.inter-hs.com/ )と協力して、同社が持つ技術を緩衝材として活用することや、今まで海外に輸送ができなかったものを真空にして保存しつつ輸送する取り組みをしています。物流と直接的には関連がない企業でも、それぞれが持つサービスや技術と物流を掛け合わせて課題解決をしていくための投資を行っております。
 

VIFのポートフォリオは下記をご覧ください。

 


これらの投資の軸としては、中期経営計画に挙げていた「Team Green Logistics~共に創り未来に貢献する~」が関係しているのでしょうか?

そうですね。Team Green Logisticsは、「Green」「One Stop」「Support」という3本柱で課題解決を行っていく考え方なので、ここを軸に投資先の検討しています。


Greenは、いかに空気を綺麗な状態のまま輸送できるかという観点です。積載効率を高めることで、交通の渋滞やドライバー不足問題や1社あたりの収益、交通事故の削減などに寄与していきますので、そういう未来を目指していきたいです。
One Stopは、フィジカルインターネットによるGreen物流の実現を目指しています。デジタルプラットフォームでお客様や輸送事業者各社が保有する輸送データをつなぎ、中継センターなどオープンに活用できるアセットで物流業界全体の効率化に寄与していきたいです。
Supportは、お客様に成り代わってペインを解消できるかに注力しています。今までお客様自身で対応されてきたことや、弊社が介入してこなかった領域に、どうやって入り込んで行けるかを目指しています。


投資先の発掘や選定の基準となるのはマーケットか、顧客の課題解決だとどちらの比重が大きいでしょうか?

Spiral Innovation Partners(GP)さんと連携しながら、ファンド運営を行っております。スタートアップからお声がけいただくこともありますし、VC、CVCの方々からご紹介もあります。私たちはあくまでも物流会社なので、物流会社としての軸はブラさないように心掛けております。オープンイノベーション推進室は、プロパーのメンバーが多く、物流現場の仕事を経験しています。現場のリアルや、課題を分かっているメンバーだからこそ見えてくるものはあると感じます。


CVC担当の皆様が顧客と直接対話したり、課題をヒアリングする機会はありますか?

あります。スタートアップや企業にはもちろん直接対話して、課題解決のための方法を模索しますし、投資先のお客様にもお会いすることで「この作業で時間がかかっている」「ここでいつも作業が止まってしまう」などの課題をお聞きしてきました。各社それぞれに日本の物流をよくしていこうという想いがあり、そのために情報連携をしてエコシステムを作っていくことが大切だと思います。
業界によって目線は様々ですが、「バリューチェーンをどうやって作っていくのか」「日本の経済をどう改善していくのか」といった目標や成し遂げたいことは同じだからこそ、「物流の観点からは〇〇ができそう」「金融の観点からは〇〇ができそう」と各業界の各社とディスカッションする機会も多いです。


他業界との連携がおありとのことですが、同業他社との連携についてはいかがでしょうか?

オープン・パブリック・プラットフォーム(以下、O.P.P)という概念のもと、社内外、業種の違いを問わず連携した(オープン)、誰もが使える(パブリック)、物流プラットフォームを構築し、プラットフォーム利用者それぞれの効率化や価値向上、更にはインフラとして産業・環境・生活への貢献を実現する構想です。
これがまさに横との連携を増やしていく考えで、1社でできることは限られていますし、社会課題である2024年問題を解決するためには、競合とか関係なくみんなで協力してやっていかないといけない瀬戸際にきている状態かと思います。
我々としては、大型トラックが営業所の拠点間を移動する幹線輸送を得意としていますが、他社様だとラストワンマイルと言われるお客様へ届ける部分や、もっと手前の船で持ってくる、倉庫を保有しているなどそれぞれの特色と強みがあるので、そこを集合体として協力しつつ、弱い部分は平準化してやっていこうという流れがあります。目指す方向性は会社が違っても同じなので、いかにお客様の課題を解決できるかという軸を持って、各社で話し合っています。

 


髙橋様が別のインタビューで農業DXに注目しているとのことでしたが、その理由と現在の取り組みについて教えてください。

日本の農業は高齢化や人手不足、輸入品との価格競争など、様々な課題に直面していて、こうした状況下で、農業の生産性や効率性を向上させるために注目されているのが、デジタル技術を活用した農業DXだと考えています。
農業物流には、少量多品種な農産物は物流コストが高く、鮮度維持も難しいという問題や、農業生産者、物流業者、小売業者間の情報連携が不足しており、非効率な物流が発生しているという問題など、多くの課題が存在しています。
これらの課題を解決するために、ライドシェアサービスを活用した農産物の配送、コールドチェーンの強化、情報プラットフォームの構築、ラストワンマイルサービスの高度化などがあります。
農業DXを通じて、物流の大変さを理解してもらい、消費者に安全・安心な農産物を届ける持続可能な農業の実現を目指していきたいですね。農業DXは、農業の課題解決だけでなく、地域活性化やフードロスの削減など、様々な効果が期待できるので、今後も農業DXの推進に積極的に取り組んでいこうと思います。
また、先ほど課題解決策として挙げたラストワンマイルサービスについては、より付加価値をつけたサービスをお客様に提供できるよう、専門部隊を立ち上げながらサービス向上に努めています。


現在の業務はどのようなことを行っているのでしょうか?

メインの業務内容としては、スタートアップのソーシングと社内連携です。投資先との連携及びスタートアップとの連携をどう加速させるか、エコシステムどうやって作っていくのかをメインに各方面と連携しています。


スタートアップとの連携とは具体的にどのようなことですか?

スタートアップ企業が提供している技術やサービスを導入することで、私たちの社内の業務効率が向上し、スタートアップの売上に貢献するのでwin-winの関係となります。もしくは、スタートアップ企業のサービスと我々のアセットを合体してお客様に提供することもあります。中長期的には規模が大きいものを作ることも多々あります。弊社が投資をする時点で、その事業やサービスが業界にどのくらいのインパクトを与えるかは想定していますが、スタートアップは業界の傾向や世の中の状況によって方向性が変わる場合もありますので、我々が目指そうとしているところと方向性がズレないようにかなり密に協議しながら進めています。


オープンイノベーション推進室は、新規事業・CVC・M&Aの大きく3つのチームに分かれているとのことでしたが、各部門の違いは何でしょう?

セイノーホールディングスオープンイノベーション推進室は、新規事業、CVC、M&Aの3つのチームで構成されています。それぞれのチームは、イノベーション創出という共通の目標に向かって、それぞれ異なる役割と強みを持ち、連携しながら活動しています。
新規事業チームは、まさに「0から1を生み出す」実行力に特化したチームです。アイデアを具体化し、事業として立ち上げるまでの道のりを力強く担います。事業化に向けた情報収集、アライアンス構築、そして具体的な事業運営まで、一貫して推進していきます。
CVCチームは、新規事業の種となる構想と企画を生み出す役割を担っています。市場調査やトレンド分析に基づき、独創的なアイデアを創出し、事業化の可能性を検討します。CVCチームは、単なる企画にとどまらず、事業化に向けた具体的な戦略策定にも携わります。
M&Aチームは、社内事業とのシナジーを追求しながら、長期的な視点で事業ポートフォリオを拡充していく役割を担っています。M&A案件の調査・分析、交渉・実行まで、幅広い業務をこなします。事業部や事業会社との連携を密にし、M&A活動を通じてグループ全体の成長戦略を推進します。
3つのチームは、それぞれの強みを活かしつつ、緊密に連携しながら活動しています。新規事業チームは、CVCチームが企画した事業を実際に実行に移し、M&Aチームは、事業ポートフォリオを拡充するためのM&A案件を積極的に発掘・検討します。各チームの垣根を超えた横断的な連携を強化することで、イノベーション創出を加速させています。定期的な情報共有や共同プロジェクトの実施を通じて、それぞれのチームの強みを活かし、より効果的なイノベーション活動を実現しています。


3つのチームを経験した髙橋様ですが、現在所属しているCVCチームの魅力は何でしょうか?

チームは違えど、「物流業界をどうアップデートするか」という軸は同じなので、どれもやりがいはありますが、私自身はそれを人に伝えることが好きなので、多方面の人々と連携しながら、会話しながら、進めていけるCVC担当は天職だと思います。


仕事のやりがいはいかがでしょうか?

物流業界で長年営業やドライバーとして勤務してきた私は、お客様とのやり取りを通して商品をどのように売り上げ、利益を上げるかを常に考えてきました。しかし、CVC担当という新たな役割を担うようになってから、仕事のやりがいが大きく変化しました。
CVC担当として、物流会社全体や業界全体を俯瞰する視点を持つようになり、視野が格段に広がりました。個々の商品の売上にこだわるのではなく、サプライチェーン全体を最適化し、持続可能な物流システムを構築することこそが重要だと認識するようになりました。
また、CVCという立場でスタートアップ企業と連携することで、社内では得られない新しい知識や経験を得ることができます。現場で培ってきた経験とCVC担当として得た知見を活かし、社内外をつなぐ橋渡し役となることで、物流業界全体の活性化に貢献できると実感しています。もちろん、CVC担当の仕事は簡単ではありません。日々新しい課題に直面し、解決策を模索する必要があります。しかし、その過程で得られる学びや成長こそが、私の仕事の醍醐味であり、やりがいだと考えています。


仕事で大切にされているポリシーはありますか?

「次工程はお客様」
という考えです。自分が行っている仕事の先には必ずお客様がいらっしゃるので、常にお客様のことを考えて最優先で動くという考えを日頃から大切にしています。


それは社内の文化ですか?

文化ですね。社内の文化的にもお客様ファーストが大前提で、「顧客第一主義」という言葉も浸透しているくらい、お客様が全てです。そのため、私が今行っている業務も、お客様の課題解決のために物流業界だけに特化した投資ではなく、サプライチェーン全体の最適化のために情報収集と投資を行っています。


髙橋様、ありがとうございました!



 

セイノーホールディングスのオープンイノベーション推進室について

詳しく知りたい方はこちら https://seinocvc.com/vif/


 


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