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ライフネット生命・UWC ISAKの立ち上げ秘話に迫る!

更新日:10月17日



今回お話を伺ったのは、ソロモンブラザーズから、ライフネット生命やお金のデザインやSDGインパクトジャパンの立ち上げ、日本初のインターナショナルボーディングスクールUWC ISAKの立ち上げ、そしてエンジェル投資やVCと様々な分野でご活躍されている谷家 衛 様にインタビューさせていただきました。ご経歴から、ライフネット生命・UWC ISAKの立ち上げ秘話をお伺いしました。


プロフィール:

株式会社SDGインパクトジャパン取締役会長として活躍する傍ら、時代に必要とされる新たなニーズをかたちにすることをライフワークとしている。ソロモン・ブラザーズでは、アジア最年少のマネジングディレクターに就任しアジアの投資部門を統括。その後日本で先駆けの独立系オルタナティブ運用会社であるあすかアセットやマーキュリアやD4Vを立ち上げた。主な実績に、日本ではじめてのオンライン生命保険(ライフネット生命)や、日本初のロボアドバイザリーお金のデザインの立ち上げなどがある。日本初のインターナショナルボーディングスクールのUWC ISAKを着想し、発起人代表を務める。1983年灘高校、1987年東大法学部卒。



目次


 

ご経歴から教えていただいてもよろしいでしょうか。

私は1987年に大学を卒業後、ソロモンブラザーズ証券に入社しました。その後、95年からアジアの投資責任者を務めました。98年にソロモンがシティグループに買収されたのを機に退社し、アメリカのヘッジファンド、チューダーの日本法人を立ち上げました。2001年にはチューダーをMBOし、あすかアセットマネジメントという投資会社を設立しました。
1999年に、ソロモン時代からの親友の松本氏がマネックス証券を創業し、マネックスに投資をしたことをきっかけにスタートアップ投資を始め、その後、日本政策投資銀行とジョイントベンチャーで現在はマーキュリアとして上場しているあすかDBJパートナーズを設立しました。あすかDBJでは、専らベンチャーキャピタルとグロースキャピタルの業務を行っていました。


ソロモンブラザーズではどのような業務を行っていましたか?

大学卒業後、私はソロモンブラザーズに入社し、債券部門でアービトラージ業務に携わりました。これは、市場の価格差を利用して利益を得る金融工学的手法を用いたもので、私は割安な債券を購入し、割高な債券を売却することで収益を上げていました。自己勘定部門に所属し、会社の自己資金運用に携わりました。金融工学が盛んだった当時、私は最先端の知識と技術を駆使し、様々な金融商品を扱い、投資戦略を立案・実行しました。
当時、金融工学が大きな注目を集めており、マイケル・ルイス著「ライアーズポーカー」のような書籍もベストセラーとなっていました。まさに私がいた部署こそ、この本で描かれている部署でした。ソロモンブラザーズは、ノーベル賞受賞者を含む一流の学者やトレーダーたちが集う環境でした。最先端の金融工学を駆使し、常に新しい戦略を模索する日々は、とても面白かったですね。


大学在学中から、日本企業より海外志向だったのでしょうか?

大学卒業後は、内定していた三菱銀行へ就職する予定でした。しかし、在学中にリクルートでアルバイトをしていた時に様々なOBの方と出会い、特にホンダやソニーのOBの方々の話を聞き、自分の成長と会社の成長が重なるような人生に魅力を感じるようになりました。
当時は起業は一般的ではなく、小さな会社で会社と自分が一緒に成長していく過程に大きなやりがいと幸せがありそうだと感じました。そこで、三菱銀行への就職を辞退し、1年間留年して、当時King of Wall Streetと呼ばれ、日本に進出したばかりのソロモンブラザーズという外資系金融機関へ入社をしました。ソロモンブラザーズは入社当時50人程度の規模でしたが、その後の会社の成長とともに個人としても大きく成長することができました。結果的に、ソロモンブラザーズは10年後に吸収されてしまいましたが、若い頃から活躍するチャンスを与えられたことは本当に幸運だったと思っています。


立ち上げ時の苦労や、日本法人として大変だったエピソードはありますか?

毎日市場で格闘して、自分が生き残ることに必死だったので、最初の頃は会社のことを考える余裕は全くありませんでした。
しかし、新しい部署や商品を立ち上げ、日本市場に導入する機会を与えてもらいました。具体的には、アービトラージという金融工学的手法を用いた部署の中で、債券オプションやキャッシュアンドキャリーなどの新しい金融商品と日々向き合っていました。新規ビジネスを始める機会と実行する機会を多くもらえた環境でしたので、とても感謝しています。


あすかアセットマネジメントの立ち上げの経緯はどのようなものだったのでしょうか?

1999年、私は明神さん(※)と共にアメリカのヘッジファンド「チューダー」の日本法人を設立しました。2年間運営した後、明神さんは新しいファンドを立ち上げられましたが、私はマネックス証券やクリードなどのスタートアップに投資の過程で、自分たちも自分の会社を始めてみたいと考えるようになりました。そこで、チューダージャパンのMBO(経営陣買収)を実行して、2002年にあすかアセットマネジメントを設立しました。

※伝説の投資家である明神茂様。ソロモンブラザーズの元副会長。



ご自身でもファンドを作りたくなった理由はどのようなことがあったのでしょうか?

スタートアップ投資を始めた当初、私は金融工学に基づいた詳細な分析を重視していました。しかし、実際に投資してみると、マーケット環境やビジネスプランはすぐに変化し、当初の計画通りにはいかないことがほとんどでした。成功している企業を見ると、ビジネスモデルよりも、経営者やチームの力が重要であることに気づきました。誰がやるかによって結果が大きく左右されることを痛感し、我々もチームで勝負してみたいという強い思いの中、当時一緒に仕事をしていたメンバーがそれぞれ優秀で、このメンバーであれば勝負できるという確信もあったため、投資家として独立し、自分たちの力でファンド運用を行うことを決断しました。

 

投資をする上で、様々な経営者と関わることが多いかと思いますが、「こんな人と一緒に仕事をしたいな」と思う方はどんな方でしょうか?

事業に人生を賭けて自分を表現してやってくれる素晴らしい起業家と一緒に事業を作っていくことが自分には向いているし心から楽しいな、と年々感じるようになりました。そのため、一緒に仕事をする相手は、事業を通じて自分を思いっきり表現できる人がいいですね。


「事業を通して自分の表現する」とは具体的にどういうことでしょうか?

これまでの経験やスキル、価値観を全て事業に注ぎ込み、世の中に新しい価値を生み出すことです。これまでの経験が点と点が繋がって見えていなかったとしても、事業を続ける中で、自分が本当に大切にしていること、そして自分が成すべきことが見えてくる。その過程で、過去の経験が全て繋がってくるような感覚を味わえると思っています。
大きなビジョンを共有しながらも、それぞれ独自の個性や強みを生かして自分を表現していく人と共に事業を大きくしていきたいです。自分を思いっきり表現していく起業家と、マクロな視点で成長分野を見極め、社会課題の解決に貢献できるような事業を展開できるのが理想です。


ライフネット生命の立ち上げ秘話についてもぜひお聞かせください。

ある時、ソロモンと保険会社トラベラーズとの合同研修に参加する機会があり、トラベラーズの運用部の人々と交流し、保険というビジネスモデルの面白さを知りました。
当時、金融工学の世界では、5ベーシスポイント(0.05%)という微々たるリターンのために血眼になっていました。しかし、保険会社は保険料収入という基盤的な収益があるため、長期的な視点で運用することが可能でした。特に印象的だったのが、ウォーレン・バフェットのような大規模な保険会社の運用スタイルです。彼らは、資金の調達でも運用でもどちらでも長期的な収益の追求を続けていました。その経験を通して、保険業界への参入を強く決意しました。
ーーーしかし、なかなか具体的な方法が見つからず、再保険のための投資ファンドであるキャットボンドファンドを立ち上げるにとどまっていましたが、オンライン証券も軌道に乗っていましたし、オンライン銀行も出てきていたので、オンライン保険の可能性を思いつきました。そして、オンライン保険事業を成功に導くことができる経営者を探し始めたのです。様々な出会いの中で、岩瀬大輔さんと出口治明さんと出会い、彼らと2006年にライフネット生命を立ち上げました。


「金融商材なのにオンラインで大丈夫?」と世間の反応はならなかったですか?

おそらく当時、世界で初めてのオンラインの保険会社だったと思います。
そういう意味では非常に新しかったですね。一般的には、保険セールスの方が提案して保険に入ることが多く、保険=高い買い物=オンラインでは売れないと言われている時代でしたね。だからこそ最初は簡単には売れなかったですが、そこは岩瀬さんと出口さんが素晴らしかった。二人が世の中を啓蒙してくれたおかげで、事業が軌道に乗りました。本当に二人のおかげです。

 

ここからは別事業である教育についてお伺いしていきます。



ライフネット生命立ち上げ後、別事業にて投資→上場→倒産を経験されたと伺いました。その件について、詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか?


ついでにまず学校立ち上げの話をさせてください。ライフネット生命の岩瀬さんに「他にやりたい事業はありますか?」と聞かれ「実は学校を創りたい。発展途上国から才能のある子どもたちを奨学金で迎えて、日本の子どもや先進国の子どもと一緒に勉強ができる全寮制の学校を創りたい。」と打ち明けました。そこで、岩瀬さんが紹介してくれたのが、小林りんさんでした(※)。

元々彼女はフィリピンでストリートチルドレンをサポートする教育プログラムを 作っていて、その流れで、アジアの社会企業家を応援するファンドを作りたい、と相談に来たことが出会いのきっかけでした。私自身も、学校を一緒にやってくれる人をずっと探していたので、「こんなにぴったりの人はいない!」と思い、一緒に学校を立ち上げることになりました。
当時、第一次バブル真っ只中でしたので、私が投資した会社の多くが上場していて、投資先の株だけで数百億はありました。そのため「お金の心配はしなくていいよ」と小林さんにも伝えていた矢先、リーマンショックが起こり、投資していた会社がことごとく倒産してしまってお金が全く無くなってしまい、個人資産はマイナスになってしまいました。
そこで方針を変えて、100人の投資家から1,000万円を集めて、学校を創ることにしました。非常に大変な試みでしたが、たくさんの方がオーナーシップを持ってくださり、100人のFounderで一緒に学校を創ることになりました。ISAKが今のように素晴らしい学校になったのは、このすべてのFounderや先生や学生たちみんなで創ってきたおかげで、結果的には本当に良かったと感じています。


「学校を創りたい」という想いはどこから生まれたのでしょうか?

かつて日本は高度経済成長期を迎え、人口と中産階級の増加と市場拡大により、日本市場には大きなチャンスがありました。私自身、英語力に自信がなくても、日本の市場の大きさに恵まれ、外資系企業で活躍することができました。
しかし、現在、中国やインドなどの国々が経済成長を遂げている一方、日本はかつてのような時代ではありません。グローバル社会で活躍するためには、英語でのコミュニケーション能力が不可欠です。息子をインターナショナルスクールに入れたのも、将来グローバル社会で活躍できる人材に育てたいという思いからでしたが、多くのインターナショナルスクールは裕福な家庭の子供ばかりで国は違ってもライフスタイルのダイバーシティを感じられませんでした。
一方、近年、発展途上国から台頭する起業家や活躍する人材が増えています。彼らには、世界を変える力があると信じています。そこで、私は発展途上国の才能ある子供たちに奨学金を提供し、日本や先進国の子供たちと一緒に学べるインターナショナルスクールを設立したいと考えました。大学では海外からの学生にも奨学金制度が充実しているところもありますが、高校の場合はそうではありません。特にアジアの発展途上国には、優秀な才能を持ちながらも教育機会に恵まれない子供たちが多くいます。この学校を通して、発展途上国の子供たちが日本に学びに来ることができれば、先進国のこどもたちも彼らから色んなことを学べるでしょうし、彼らが日本のファンとなり、将来、日本と母国の架け橋となってくれるに違いないと思いました。
息子をインターナショナルスクールに入れた経験、発展途上国のハングリーで才能ある子供たちへの教育機会の不足と彼らの無限の可能性、そして国際交流を通じた平和構築への思いが、この学校設立の原動力となりました。


発展途上国から日本に来て学びたい方々は、谷家様が作られた学校をどうやって見つけるのでしょうか?

ISAKは、発展途上国から多くの留学生を受け入れていますが、当初は口コミで生徒を集めていました。特にインドでは、カースト制度の影響で教育機会に恵まれない優秀な子供たちが、孤児院などで勉強していました。そんな子供たちの中から、ISAKの存在を知り、サマーキャンプに参加したり、口コミで応募したりしてくるケースが増えてきました。
その後、ISAKはUWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)と連携することで、世界的なネットワークに入ることができました。UWCは、イギリス王室が第二次世界大戦後に設立した国際的な教育機関であり、世界中に18校の学校があります。ISAKはUWC加盟校となったことで、世界100カ国以上の優秀な生徒を受け入れることができるようになりました。また、UWCの先生たちが世界中を巡回しているため、多様なバックグラウンドを持つ生徒たちに質の高い教育を提供することができます。


 

最後に谷家様の仕事のポリシーについて伺っていきます。


仕事で大切にされている考え方やポリシーがございましたら、ぜひ教えてください。

私は、「ワンネス」という考え方、つまり、自分を含め、周りの人や自然、地球、宇宙全てが繋がっているという価値観を大切にしています。
ISAKのモットーにも「ワンライフ」という言葉が入っています。これは、「1度しかない人生」という意味と、「人間も動物も植物も地球はすべて一つというワンネス」という意味の2つを込めました。
すべての人には良いところも悪いところもあり、それぞれの個性の中で、どの部分を表現するかによって、人生は大きく変わります。私は、「ワンネス」に合致する個性を表現することが、自分にとっても社会にとっても一番幸せだと考えています。
「悲観は気分、楽観は意志」という小林りんさんが好きな言葉の通り、意思の力こそが重要です。しかし、感情に流されず、意思を持って行動するのは簡単ではありません。意志を持って良い自分を表現することは、自分自身を大切にすることと同時に、社会貢献にも繋がります。人はそれぞれ異なる個性を持っているため、自分を表現することで、社会に新たな価値を生み出すことができると信じています。私自身、そんな人間でありたいと日々考えながら仕事をしています。

谷家様ありがとうございました。



谷家様には今後も、日本と海外の投資について、スタートアップについて定期的に伺っていきます。

不定期での掲載となりますので、ぜひメンバー登録をして掲載をお待ちください。



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