今回取材をさせていただいたのは、博報堂及び博報堂DYメディアパートナーズ、ドリームインキュベータ(以下、DI)を経て独立した半田勝彦様。半田様が仕事の軸にしている「ビジネスプロデューサー」という仕事に迫る。
プロフィール:
株式会社知開 代表取締役社長
博報堂及び博報堂DYメディアパートナーズ、DIを経て、株式会社知開を設立。博報堂入社前は、エイティーワン・エンタテインメントにて作詞家の秋元康氏に2年間師事。DIでは、執行役員インキュベーション(投資)担当として、主に事業投資先の発掘、投資実行、投資先企業などへのハンズオン支援。その後、執行役員ビジネスプロデュース(コンサル)担当として、通信キャリア、電気メーカー等の事業創造戦略を実現/伴走支援。
現在、DIではフェローとして継続的に活動。また、モブキャストホールディングス取締役も兼務。
この記事は前半と後半に分けて配信します。
前半では、半田様がビジネスプロデューサーを志した理由と秋元康氏との出会い、教え、そしてDIの入社までをお届けしました。
今回は、半田様が注目する業界・業種、会社の見分け方、日本のスタートアップの将来についてお届けします。
目次:
半田様が今注目している業界、業種、サービスを教えてください!
業界に地殻変動が起きているような領域というのは狙い目だと思います。 例えば、DIでは2021年に趣味の雑誌を発行する枻出版社の一部事業を譲受しました。雑誌業界はとても苦しいですけど、濃いファンがいて、優れた編集力を持っている。こういった強みを持って業界自体が変わっていけるチャンスがあるのではないか。そういったチャレンジは続けていきたいですね。
現在は、芸能の世界でも独立やエージェント契約が増えてきており、徐々に米国型のスタイルに移行しているのかもしれません。こういったところも地殻変動領域だなと感じます。
日本は観光に課題がありましたが、インバウンド客の増加によりさらに地殻変動が起きていくと思います。これまでは、中国の富裕層が来日して爆買いして経済が潤ってきました。これからは欧米系の富裕層の来日が増えてきて、モノを買うのではなく、体験を買う流れになりそうです。1回の滞在で数百万円使うと言われている富裕層です。高額ではあるものの、そこでしか体験できないサービスというものはこれから観光の中で生まれてくるだろうと思います。そういった富裕層は、観光だけでなく不動産などの投資先を探すことも旅の目的にしていたりします。インバウンド客自体はすでに増加していますが、観光の在り方、コンテンツ自体に地殻変動が起きそうだなというのを感じます。
少し視点を変えて、会社の見極め方についてお話を伺っていきます!
上場する会社と途中で挫折してしまう会社の特徴や違いはありますか?
私自身が「どうすれば上場できますか?」っていう質問をある経営者にしたことがあります。その際に 「上場すると決めることです」と返ってきました。
この考えって本質だなと思いました。上場までの道は、事業自体の成長だけでなく、ガバナンスをはじめ、やらないといけないタスクも多い。心が折れそうなこともいっぱいあるんですけど、上場するって決めてやり抜くっていう、もうそれでしかないなと思います。
結局、計画に沿った成長性を持てるのかに関しても、泥臭くやり抜くしかないですし、思ったような時価総額にならなそうでも延期するのではなく、「上場後の成長を描いていくことが大切」という思いでやり抜くってことなんじゃないかなと思います。定性的な話なんですけど、とても本質だなと。
上場後に加速する企業と、そこで成長や成績が止まってしまう企業の見分け方はいかがでしょうか?
上場がゴールなのか、それとも通過点と思っているのか、この構想の大きさがすごく左右するんだろうなと思っています。上場をゴールで見据えた場合の構想ってとても小さなものですけど、通過点と思っている経営者はもっともっと大きな構想を描いて進めているんじゃないかなと思いますね。
スタート地点で描いたものがすごく重要。”上場するために”テクニカルに走り出すと、どんどん現実的ではあるものの小さな枠組みの中でビジネスをしていくようになってしまいそうで、スタート地点の構想を忘れずにやり続けられるかどうかで大きく差が出るんじゃないかなと思います。
例えば、転職を考えていて、企業研究をしている場合はどのような観点を見たら見極められそうでしょうか?
戦略としてマーケットをどう切り取ってるのかという見方はすごく重要だと思っていて、 さっきの構想の大きさは、結局どれだけの市場を見据えてるのかっていうことなんだと思います。1つ1つの業界だけを切り取ってしまうと、人口減少の日本では市場はとても小さくなります。複数の業界を跨いだり、つないだり、大きく再編している企業に成長性を感じます。自分が入りたいなと思ってる企業が、 どんなミッション、ビジョン、バリューを示しているのか、市場をどう切り取って構想を描いているかを見ていくと良いと思います。
実際、今元気が良い企業って「何業界ですか?」と言われると、パッと答えられなかったりする。一言でまとめられない企業ほど、元気がいいなと思うので、ぜひこのような視点も持っておくと見極めやすくなるんじゃいかなと。
その他にポイントはありますか?
投資家が企業を見極める時には、IR資料を必ず見ますよね。なので、20代、30代で訓練だと思って、IR資料とか、PL/BS(損益計算書、貸借対照表)は読み取れるようにしておくと、周りと差がつくと思うので、おすすめですね。また、DIの中では四季報の写経を訓練に使ったりする話も出てきます。そういった自分の引き出しづくりもおすすめです。
事業は上手くいっているようだけど、組織化されているのか?とか、組織化するための人材はいるのかとか、どんな仕組みで動いているのか、そういう観点が大事だと思います。
また、転職する側は自分が配属される予定の部署しか見ないことが多く、会社全体を見ようとしないですが、会社全体のカルチャーや組織機能・編成は必ず見た方がいいし、人事の人に質問をした方がいいと思います。
そういうことは面接でどんどん質問していった方がいいですか?
そうですね!「組織図って見せてもらえませんか?」とかっていうのを質問する際に言っても全然いいと思いますね。 「差し支えのない範囲で組織図を見てみたいです」って聞いて、見せてもらうだけでも全体像把握できると思うので。
見せてもらった上で、「〇〇部署に人が多いのはなぜですか?」とかを聞いていくと、経営戦略として、事業毎の役割なども分かってくるので、まずは見てみる、聞いてみることがいいと思います。
最後に日本のスタートアップについてお話を伺いました!
国内外で様々な投資をされてきた半田様から見て日本のスタートアップの課題はズバリなんだと思いますか?
アメリカでは、スタートアップの若い起業家の横にいるCxOには一定シニア人材がいて、専門性や経験値を持ってCEOを支えたりしています。こういう経営チームづくりは、これからの日本のスタートアップにもっとあっていいんじゃないかと思います。
大きなビジョンを持った若い起業家が会社を立ち上げて、ある程度従業員数が増えていくと、起業家には事業を作ること、組織化をマネジメントすることの2つが求められてきます。事業化と組織化の両方得意です、という人もいますが、特に組織化やマネジメントはベテランの安定感のあるシニア人材に任せ、起業家は事業成長にコミットしていくという方法も十分あると思います。
スタートアップこそ、40代、50代、場合によっては60代のシニア人材にもっと目を向けて良いのではないかと感じます。
スタートアップ側の受け入れ体制や文化の醸成などが必要になってきますね!
そうですね。スタートアップ側だけでなく、エグゼクティブ人材、シニア人材側も自分から開いていく必要もあるかもしれません。
私も52歳ですけど、団塊ジュニア世代は人口も多いです。ただ、人口が多いものの終身雇用の世代でもありますから、「その企業しか知らない」人が多いと思います。その視野を拡げていき、スタートアップも門戸を広げていけば、スタートアップの業界も活性化していく可能性があるのかなと思います。
フルタイムでコミットしてもらわなくてもいいと思うんです。副業というよりは、多分働き方が変わってきて、「いろんな会社の取締役や顧問をやってます」というような人は私の周辺でも増えてきています。 そういうエグゼクティブ人材、シニア人材をどんどん活用して、若い人と経験を積んだ人たちが一緒になって働いていけると良いですね。
半田様、様々な観点からありがとうございました。
半田様は2024年4月にDIから独立し、株式会社知開を設立されています。
経営・事業戦略・マーケティング・M&A等に関するコンサルティング業務を受けていらっしゃいますので、
ご興味がおありの方は下記よりお問い合わせくださいませ。
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