今回は、海外進出を目指す大手企業や起業家を支援するPacific Sky Partners 代表・AZCA パートナーの村瀬 功(Zak Murase)様。キャリアはエンジニアからのスタートだった村瀬様が、今では日本人起業家の支援をされている。どういった経歴で今のキャリアに辿り着かれたのか、そして現在の取り組みとシリコンバレーから見た日本を熱く語っていただきました!
記事は前半と後半の2部構成。前半となる本記事は、村瀬様のご経歴から現在の起業家支援を行うことになった背景をお届けします。後半では、日本企業や起業家が海外進出で成功するためのポイントや課題をお伺いしているので、後半の配信もお楽しみに。
プロフィール:
1994年慶應義塾大学環境情報学部卒。ソフトウェアエンジニアとしてソニー入社後、1998年にパソコンVAIOのプロダクトマネージャーとしてシリコンバレーに赴任。米国PlayStation Network、光ドライブ事業、UX開発におけるスタートアップとの協業などを経て、2013年に米国ソニーを退社。日系ベンチャーキャピタルのシリコンバレーオフィス代表としてKDDI、三井不動産などのCVCファンドからのアメリカのスタートアップへの投資を担当。 2017年独立しPacific Sky Partnersを創業。日本企業のシリコンバレーにおけるCVCファンド設立支援や、Plug and Play Japanで日本のスタートアップへの投資ヘッドなどを経て、現在はクロスボーダーのコンサルティングファームAZCAのパートナーとして日本企業の新規事業開発の支援を行うプロジェクトを推進している。
目次:
村瀬様のご経歴から教えていただけますでしょうか?
新卒でソニーに入社しソフトウェアエンジニアとしてCD-ROM Discmanを担当していましたが、パソコンVAIOの立ち上げ時に商品企画を担当。1998年にVAIOのUSにおけるマーケティング担当という形で初めてアメリカに赴任しました。7年間の赴任生活の後、 「日本に帰ってくるように」という話があったのですが、「帰りたくないんです」と(笑)。
当時、寛大な上司に恵まれていて、「アメリカのソニーで他の仕事見つけられるんだったらどうぞ」と言っていただいて。たまたま他部署で仕事があったので、そちらに転籍してこちらの現地社員になりました。その後、2013年に日本 VCのグローバル・ブレインから、「シリコンバレーの方で投資を強化したいので、オフィスの立ち上げをやってくれないか」と声をかけていただいて、2013年にグローバル・ブレインのシンコバレーオフィスの代表としてVCとかスタートアップの世界に入ったという感じです。
学生や就活時代から海外は視野に入れていたのでしょうか?
そうですね。通っていた中高一貫の学校のクラスの半分が、東大に行くような学校で、何となく流されるままに、東大を受けたのですが箸にも棒にも掛からずで不合格になり浪人をしたんです…。その浪人の時に通っていた駿台予備学校の先生との出会いが衝撃的で。その方は天才的な数学者で非常に変わっていて、急に「なんで君たちはそこまで頑張ってまで東大に行きたいの?」と質問してきたんですね。「周りのみんなが東大に行きたいから自分も行きたいと思っているだけで、本当に俺は東大に行きたいんだっけ..」と、そこで初めて自問自答しました。「やっぱり自分でやりたいことをやらなきゃもったいないな」と。
そのタイミングで、自分のやりたいことに向き合い、海外志向になったと言うことですか?
そうですね。あとは子供の頃によく観ていた「アメリカ横断ウルトラクイズ」という アメリカを横断しながらクイズを勝ち抜いていくというテレビ番組があり、「アメリカってかっこいいな」と漠然と感じていました。 結局東大には落ちたのですが、滑り止めのつもりで受験した当時新設学部の慶應SFCに合格したので、そちらに行くことにしました。何か新しいことをやれそうでワクワク感がありました。
慶応には交換留学の制度があったので、それを使って1年間留学しました。浪人時代から、「絶対留学しよう」って思ってたんで、英語は結構頑張って勉強したつもりでした。
ですが、留学してみてコミュニケーションが全然取れないことに愕然としました。やっと「コミュニケーションできるようになったかな?」と思ったら、あっという間に1年間の留学が終わって帰国するという感じだったので、フラストレーションが溜まった状態でした。なので、ソニーに入社してからもずっと上司に「海外赴任したい」というのを念仏のように唱えてました(笑)。4年経ってやっと念願の海外赴任の話をもらったという感じです。
本当に念願の海外赴任という感じだったんですね。そこから、様々なビジネスを経て投資の道へとなったのですか?
ソニーにいた時は、投資とは全く関係ない仕事(プロダクトを作る側)をやってたんですよね。その時から、スタートアップと協業しながら何かモノを作るみたいなことはやってはいたんですけど、投資する側ではなかったので、グローバル・ブレインから声かけてもらって初めて投資家として活動を始めたんですよね。偶然でした。
投資する側からサポート側になった背景はどのようなきっかけがありましたか?
最初にシリコンバレーに来た98年がドットコムバブルの絶頂期だったんです。当時、アメリカ人の同僚がどんどんスタートアップに転職して、その会社がIPOをしてとんでもないお金持ちになった人がたくさんいたわけですよ。そんな人たちが周りにいる中、アメリカから俯瞰的に日本を眺めていると、日本がどんどん遅れていくのを痛感しました。
日本は全然成長しないし、アメリカはこんなにスタートアップで盛り上がっているのに、何やってんだろうと感じていました。日本がついてこない状況に対して、何かできないかなと思い、日本企業のサポートを開始しました。しかし実際にやってみると、大企業が変わるのは結構大変で、進みが遅いというか..難しいなと感じたので、大企業をサポートするというよりも、日本から来る起業家をサポートする方がインパクトのあることができるんじゃないかな?と。そこから起業家の支援にシフトしていきました。
今は企業向け支援というよりも、起業家支援がメインと言うことですね!
今は起業家メインで支援をしているんですが、実はまた企業向けの支援も再開しようと思っていまして。そう思えるきっかけがあったので、まだ始まっていないですが、これから本格的に進めていく予定なんです。これから一緒にパートナーを探していく段階で、実はその宣伝もあってこの前日本でイベントをやりました。
参照:
企業支援から、起業家支援になり、また企業支援をするに至ったきっかけはどのようなことがあったのでしょうか?
たまたま紹介してもらったインド人のスーパースター2人との出会いがきっかけです。彼らは起業家・投資家としての経験があるだけでなく、CiscoやGoogleなどのアメリカのテック企業をはじめ、韓国のSamsungなどとも一緒に仕事をしてきていて、大企業の中での新規事業立ち上げを多数手がけてきたのです。上手くいくためのノウハウを持っていて、彼らが手がけた新規事業はいずれも小さくて数百億円、大きいものでは1兆円規模のビジネスを作ってきました。
そんな実績を持つ2人が、「まだ日本企業と取り組んだことがないから、一緒にやってほしい」って声をかけてくれたので、こんな機会を逃す手はないなと思い、また対企業向けのサポートを始めようとしています。
村瀬様の企業向けの支援については、今後発信予定です。
次は村瀬様の現在の取り組みについて伺っていきます!
現在村瀬様が行なっている取り組みについて、詳しくお伺いできればと思います。現在起業家向けに行なっている支援ではどのようなことを行なっているのでしょうか?
まだ始めたばかりですが、事業の立ち上げや海外進出を目指す起業家を滞在型でサポートしています。
元々は滞在型ではなく企業担当者や起業家のサポートをされていたんですよね。
そうですね、社内企業家や起業家に向けたメンタリングをずっとやってきました。主に女性起業家を支援するWomen's Startup Labや、経産省が指導しているJ-Startupのプログラムの中でメンターとして参加者たちにアドバイスをすることをやってきていて、その中で、もっと長期間滞在して、ちゃんと人脈を広げたいとか、ちゃんとビジネス作りたいっていう人たち向けに場所を提供してやっています。
村瀬様からノウハウの共有やアドバイスをしているんですか?
滞在している人たちは「アドバイスを受けたいからここに滞在する」っていうのではなくて、ここにいながら、自分たちで事業を作っていく中で壁打ち相手になるというか、進めるのは彼ら、彼女ら自身なので、聞かれたら答えるというスタンスの方が多いです。滞在期間が長くなるとそれなりにお金もかかってくるので、その辺りの負担をなるべく減らしてあげるサポートができたらなと思っています。
ご自身でさらにサポートをやろうと思われた背景はどのようなものでしたか?
メンタリングを8年ほどやっていますが、全体的な底上げがまだまだ必要だなっていうのをすごく感じています。シリコンバレーで挑戦する人々をたくさん見てますが、別に贔屓目ではなく日本人が持ってるポテンシャルはシリコンバレーにいる他の人たちとそんなに差はないんですよね。
それなのに、英語が喋れないとか、さまざまなハードルがあって、せっかくあるポテンシャルが全然活かしきれてない歯痒さがあり、そのギャップをどうやったら埋められるんだろう、と考えた時に、もっとシリコンバレーに来やすくするような、「こういう環境があるんだったら、大変かもしれないけどちょっと挑戦してみよう」と思えるような人たちを増やしたいという想いがあります。
ハードルになるのって、住む場所や、食事の心配だったりするので、そこを一切心配しなくていい環境があれば、起業家たちへの大きな貢献になるのではないかなと思い、既存のプログラムとは別に個人でもサポートを始めました。
日本人にはポテンシャルがある。だからこそ、海外に挑戦できる方が増えるように、少しでもハードルになることを減らすご支援をされているということですね。
そうなんです。日本も、どんどん市場は縮小していくし、人口も減っていくし、どんどん高齢化していくし、もう海外に出るしかなくなってくるわけですよね、必ず。それでも、みんなが気づく頃にはもう遅くなってたりするので、 「今から海外行かなきゃ」っていう傾向になることを期待しつつ、そういう人が出てきた時にサポートできるように活動しています。
前半はここまでとなります!
後半は、シリコンバレーでの様々な会社と起業家を見てきた村瀬様だからこそ見える日本の現状、海外進出をするためのポイントをお話しいただきましたので、お楽しみに。
村瀬様に興味を持っていただいた方々は、ぜひメンバー登録をして掲載通知をお待ちください。
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